Blog

2021/03/15 10:36

正金醤油のうすくち

全窒素分が1.55%、無塩可溶性固形分は約17%。塩分は17%。甘味は少なく、旨味と塩味のバランスを重視した呈味成分となっている。また、色は一般的なものに比べて濃くなっている。濃い色になるのは、仕込み後、酵母発酵までの期間が長いことと、夏場の高い品温の時期が長いことが大きく影響している。

桶仕込のうすくちの難しさ

桶の中では、時間の経過とともに色の濃化が進んでいく。仕込み後、一年を経過し、再び気温が上昇する時には、うすくちしょうゆの規格、色度18番以上から外れてしまう。また、桶によって異なる経過で風味は変化していくため、搾った時のばらつきが大きくなる。うすくちの難しさは、味の深まりと色の濃化がトレードオフであること、そのバランスをいかにとっていくかだ。そして、工業製品としての安定性、料理での安定した再現性、それらを高いレベルで実現していくことが難しい。

桶仕込醤油は、2回目の夏を越えると飽和状態となるためか、風味は安定したものになる。しかし、それまでの経過、特に1年後の状態を安定したものにするのにはもう一段の高い管理レベルが要求される。

利便性、甘味を補強(一般的なうすくちしょうゆのこと)

原材料が大豆、小麦、食塩であるのが、醤油の基本形。それに、様々な原材料や添加物が加わって醤油の味が広がっていった。うすくちしょうゆは色を薄くするために、大豆、小麦以外のもので風味を補強することが多い。料理では、甘味の調味料である砂糖やみりんを同時に使われるため、甘味があるのは邪魔にならず、あらかじめ甘味と塩味が一体化して味のまとまりという点では有利。

保存性(一般的なうすくちしょうゆのこと)

うすくちしょうゆは生揚に40~50%の水(塩水)を加えて調整する。開封後の保存性を考えれば、塩分を18%前後と高めにする必要があるがそれだけでは十分ではなく、薄められることによって低下した無塩可溶性固形分やアルコールの数値を上げるためのものを補填する必要がある。例えば、BRIXを2~3%上げる糖類と、1%のアルコールを添加する。糖類添加は、呈味の問題と同時に保存性の問題も解決できる。

余談

以前、全窒素分1.45%、塩分17.5%のうすくちを糖類、アルコールの添加なし、火入れなしで製造していたが、開封後、産膜酵母が増殖しやすかった。現在の全窒素分1.55%、塩分17.0%のうすくちでは安定している。